ふかふか

　
おひるに　なりました。
ごはんの　じかんです。
　
きょうの　おひるごはんは、たきこみごはんです。
たきこみごはんは、だいすきです。
だから、ほんとうは　たべたいはずなのです。
でも、おなかが　すきません。
たべたくないのです。
　
こころが　おもたくて、
くるしくて、
なきたいような　きもちで、
にげだしたいような　きもちで、
でも、どこにも　にげることが　できなくて、
ただ、すわっているしか　できなくて、
まどのそばに　すわったまま、
にわの　くさを　みていました。
　
ごはんに　さそわれました。
みんなと　いっしょに　たべようって。
　
ひとりぼっちは、さみしいです。
だから、ほんとうは　うれしい　はずなのに、
なのに、たべることが　できなくて、
たつことも　できなくて、
ごめんなさいと、あやまって、
にわの　くさを　みていました。
　
なんども　さそわれるのは、くるしいです。
ごめんなさいと　あやまっているのに、
きずつけたく　ないのに、
それでも、やめてくれなくて、
かなしくて、
にげだしたくて、
でも、おこることも　できなくて、
なくことも　できなくて、
ひとりぼっちじゃ　ないはずなのに、
それなのに、ひとりぼっちで、
どうすれば　いいのか　わからなくて
こころは　もっと　おもたくなるのです。
　
さそわれないのは、さみしいです。
だから、わがままなのかも　しれません。
きらわれたく　ないです。
だから、がんばってきました。
たくさん、わらいました。
　
でも、がんばるのに、つかれました。
わらうのに、つかれました。
いまは、やすみたいです。
ただ、まどのそばに　すわったまま、
にわの　くさを　みていたいのです。
　
だれも、さそわなくなりました。
こころを　やすめることが　できます。
でも、こころは　おもたいまま。
なにも　することが　できなくて、
まどのそばに　すわったまま、
にわの　くさを　みていました。
　
だれかが、そばに、パンを　おいてくれました。
バターも、ついていなくて、
ジャムも、ついていなくて、
でも、レンジで　あたためた　パンは、
あたたかくて、ふかふかでした。
　
だれかが、おしゃべりを　しています。
ちかくない　ところで。
とおくない　ところで。
うるさくない　ところで。
はなしが　きこえる　ところで。
　
さそうひとは　いません。
さそわなくても　いいから。
みていなくても　いいから。
ひとりでも、たてることを　しんじているから。
　
まどのそばに　すわったまま、
にわの　くさを　みていました。
そばには　だれも　いません。
でも、ひとりぼっちでは　ありません。
　
パンを　たべました。
くるみの　はいったパンは、
ほんのり　あまくて、
あたたかくて、
ふかふかでした。

2003年6月2日　かずや