不思議なケーキ

 

 テーブルの上に小さな箱が一つ。
 中に入っているのは、何かな・・・。
 お・・・。
 これはおいしそうなケーキ!
 
 ・・・あれ?
 カードが付いてる。
 なになに・・・。
 『Eat me!(私を食べて!)』
 
 ・・・・・・。
 これって、もしかして・・・。
 『不思議な国のアリス』に出てくるケーキ!?
 食べちゃうと、大きくなったり、小さくなったりするやつ。
 
 ・・・・・・。
 んな訳ないか。
 食べちゃえ、食べちゃえ。
 
 ・・・・・・。
 そう言えば、なんでこんな所に置いてあるんだろう?
 誰かが忘れたのかな?
 でも、お母ちゃんも、お姉ちゃんも、戸棚にしまうだろうし・・・。
 
 まさか・・・ねえ・・・。
 いかん、いかん。
 こんな箱のこと、忘れよ。忘れよ。
 
 ・・・でも、食べたいなぁ。
 でも、大きくなったり、小さくなったりするのも嫌だしなぁ・・・。
 
 そうだ!
 猫のタマに食べさせてみよ!
 それで、なんともなかったら、あたしも食べるんだぁ〜♪
 
 ・・・でも、タマが大きくなったら、どうしよう。
 だっこしたら、重たそうだし、
 押しつぶされちゃうかも・・・。
 
 だめだめ! タマはだめ!
 う〜ん・・・。
 
 そうだ!
 お隣のおばちゃんに食べさせてみよ!
 それで、なんともなかったら、あたしも食べるんだぁ〜♪
 
 ・・・でも、おばちゃんが小さくなったら、どうしよう。
 お菓子よりも小さくなっちゃって、
 おじちゃんにお菓子と間違われて・・・。

 だめだめ! おばちゃんはだめ!
 う〜ん・・・。

 そうだ!
 あいつに食べさせてみよ!
 それで、なんともなかったら、あたしも食べるんだぁ〜♪

 あいつったら、いっつもあたしに意地悪するんだから!
 小さくなったら、えいって踏んずけてやるんだ。
 大きくなったら・・・。

 ・・・・・・。
 ま、いっか。
 完璧、完璧!
 あいつに決定!



 
 いたいた・・・。
 あんなところに座ってる。
 よ〜し・・・。

 あれ?
 なんだか、変・・・。
 ぼ〜、っと空見てる。
 変なの。
 ま、いっか。

 ・・・え?
 ・・・ちょっと?
 泣いてるの?
 え? え? え〜!?

 わ! しまった!
 目が合ってしまったよ・・・。

 え〜と・・・。
 そのう・・・。
 ・・・元気?

 うわーん、あたしのバカバカバカア!
 何、喋ってるのよ〜!!
 何かその・・・え〜と・・・。

 そ、そうだ。
 何か喜びそうなこと・・・。
 ・・・って。
 ・・・ケーキ?

 う〜。
 こいつに食べさせるつもりだったけど、
 こんな時に・・・。

 う・・・。
 うう・・・。
 ううう・・・。

 ・・・・・・。
 ・・・大丈夫よね?
 お家に置いてあったから、大丈夫よね?
 一緒に食べるから、大丈夫よね?
 ケーキを半分こっと。

 もぐもぐもぐ・・・。
 ・・・・・・。
 ・・・・・・。
 ・・・・・・。
 おいし〜い!!
 これって、こんなに、おいしいケーキだったの!?
 食べてよかった〜。

 あれ?
 元気になったかな?
 よかった、よかった!
 これであたしも安心して帰れるぞ。
 うんうん。

 あ〜、おいしかった。
 さてと、お家に帰りますか・・・。
 ・・・・・・。
 ・・・ん?
 何か、いつもと違う視線・・・。
 ま、いっか。


 ケーキを作ったのは、お母ちゃん。
 カードを作ったのは、お姉ちゃん。
 あたしが不思議な国のアリスを読んでたからって・・・。
 ・・・おいおい。

 あれからお友達が一人増えた。
 ・・・ケーキのおかげ?
 やっぱりあれって、魔法のケーキだったのかな・・・。

 でも、普通のケーキのはずなのに?


2000年4月1日 かずや
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